雑記01|駅の待合室で旅をする
- yonago nagiri

- 5月14日
- 読了時間: 2分
更新日:11月11日

学生時代、短期留学で初めてフランスへ行った。
スイス国境近くの小さな町・シャンベリーの語学学校に通いながら、週末にリヨンを訪ねた。古いものと新しいこと、さまざまな国籍や宗教、文化、観光客も学生も、あらゆるものが混ざっていて、心地よかった。翌週、パリで真っ先に向かったのはポンピドゥーセンター。建物の前では、お弁当を食べる人、スケッチをする人、マッサージなどの商いをする人、音を鳴らす人、踊る人。中では、展示を観たり、本を読んだり。子どもも大人も、それぞれ思い思いに時間を過ごしていて、なんとも自由で自然だった。ハムスターの家のような建築と、その周辺の空気にシビれ、「こんなところで働きたい」と思いながら帰国。就活はせず短大を卒業し、カフェのアルバイトを続けて再び渡仏。リヨンに暮らしながら、いろんなひと・ことに出会って、影響されたり、されなかったりした。
帰国後は「フランスもいいけど、大分もやっぱりいいな」と思いながら県内をうろうろ。そんなある日、学生時代にインターンでお世話になったBEPPU PROJECTの方とばったり再会し、「in BEPPUっていうのが始まって、スタッフ探してるよ」と教えてもらった。そのまま《目 in BEPPU》を手伝いながらハローワークに通い、地元・豊後大野の市民文化センターで働くことに。そこで過ごした数年間はとにかく濃かった。「あぁ、わたしにとってのポンピドゥーセンターは、案外近くにあったんだ」と感じていたけど、次第に「ハコモノ」から飛び出したい気持ちが湧き、公園みたいな場所で働きたい、またフランスにも行ってみたいと考えていた頃、二宮圭一さんから電話がかかった。
「由布院駅にアートホールって場所があって、半年でも一年でもいてみたら?」
それから、あれよあれよと2年。その後、束の間の大阪での日々を経て、また由布院に戻ってきた。戻ってきた理由はアートホールではなかったけど、なんのご縁か、今日もわたしは待合室にいる。
ここ数年、なんだか「アートのひと」と言ってもらうことが多いけど、わたしが興味をもっているのは「アート」というよりも、人間の日常/非日常を覗くこと。そのなかにアートがあったり、なかったりするくらいの待合室の余白がちょうどいい。ここで起きる出来事や訪れる人たちを定点観測するのがたのしい。ひとつの空間で予測不能なことが次々起こる感じは、まるで映画で、混沌としているのに、なんか折り合ってる。旅行客たちを迎える「フリ」をしながら、旅をしているのは実はこちらの方なのだ。しめしめ。と、思いながら、この10年を振り返ってみました。